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ブランドコンサルティングチームのメンバーが、現場で得た知見や問題意識について論じるレポートを紹介します。

コーポレートメッセージの開発
2010.5.20 コンサルタント 佐藤圭一

  企業が発する言葉。つまり企業にとって自社ブランドのキーとなるメッセージ、いわゆるコーポレートメッセージを 的確に表現し伝えていくことは、ステークホルダーに自社の姿をきちんと理解してもらうためにも、競合との違いを 明確にアピールするためにも重要であるといえます。しかしながら、企業は、特にそれが大きな組織で様々な事業を抱えていればいるほど、 商品のキャッチコピーとは違い、具体的な訴求ポイントを一つに絞ることはできません。だから、未来への夢や姿勢といったもの がメッセージにならざるを得ませんし、どこも似たようなオリジナリティのない表現になってしまうこともありえます。 コーポレートメッセージを開発するうえでの難しさはそこにあります。
 短い言葉で企業のアイデンティティを伝えるコーポレート メッセージは、思いつきやお仕着せの言葉ではなく、過去を顧みて未来を見つめていく作業を通じて、企業側が伝えるべき内容を まとめ、受け手の心に届く言葉を選んで表現していくことになります。

 「お口の恋人」「あしたものと」「ココロも満タンに」というようなメッセージを聞くと、多くの人がすぐさま企業名を挙げる ことができるでしょう。それらは簡潔で、リズムが良く、覚えやすい言葉です。しかし、ただ耳に心地よい言葉だからといって人 の心に届くということではありません。あまりにその企業の現状や振る舞いとかけ離れていては、言葉を信用されずかえってマイ ナスのイメージを与えるかもしれないからです。企業活動に裏打ちされた誠が宿る言葉こそ、ちからのある言葉となり得ます。

 では、そのような言葉を見つけるにはどうしたらよいのでしょうか。トップの独断やクリエイター・コピーライターの思い込みで掲げられる ものではありません。コーポレートメッセージは、きちんとした開発プロセスを踏んで作っていく必要があります。 それは企業としての言葉を発するために必要なプロセスだともいえます。ここではそのプロセスの一例をご紹介しましょう。


・自らを省みることで今ある姿を知る

 ブランドの価値は、経営者の考え方や従業員の意識、振る舞い方、製品やサービスそのもの、業績、広告宣伝活動などが複雑に 絡み合って形成されます。だから自社ブランドとはどのようなものなのかを漠然と考えるだけではなく、自らを振り返り、知るこ とからスタートします。
 開発プロセスを人に例えて考えてみるとわかりやすいと思います。ある人が何かの筋目に「新しい自分になろう」と思い立った とします。そのとき、内気なのか人前に出ることが好きなのか、どんな勉強をしてきたのか、資格をもっているのか、どんなこと をやっていきたいのかなど、いろいろな側面から考えてみることでしょう。良いことも悪いことも洗いざらい振り返ることで、 自分というものが見えてきます。自分を知るということなしには、新しい未来も見えてこないのです。
 企業の場合は、社是や理念、事業戦略、市場での位置付け、顧客や取引先との関係、組織風土など様々な振り返るべき要素が あります。またその「振り返る」という作業も、経営者だけでなく、従業員や顧客、株主など様々な人たちの視点で検討する 必要があります。そこで、 詳細な調査が必要になるのです。具体的には、経営者や各部門長のインタビュー、従業員や消費者に対するアンケート調査、 取引先や投資家へのヒアリング、経営方針資料や社史などの読み込みなど、社内外両面から、どのように企業像が捉えられてい るかをあぶりだしていきます。


・未来のありたい姿を見つける

 企業の「今の姿」が明らかになってくると、この段階で企業の姿を表すたくさんの言葉が浮かび上がってくることでしょう。 「お客さま第一」「いいものを安く」「安全安心」「先端技術」といった言葉だけでなく、「保守的」「知名度が低い」「ダサい」 といったどちらかというとマイナスのイメージだけど正直な言葉も混じっているかもしれません。そうして浮かび上がった言葉一 つひとつが持つ意味合いを真剣に考え直してみることが自社のあるべき姿を探っていく第一歩になります。
 そして収集した言葉を次のような3つのカテゴリーに整理してみます。企業がどこを目指すのかを表現した「ビジョン」、 顧客やステークホルダーにとって、どのようなメリットや価値を与えることができるかを示した「バリュー」、そして企業が組織と してもつ性格や雰囲気を表す 「パーソナリティ」の3つです。これを再度、人に例えてみると次のようになることでしょう。「ビジョン」では、 「人の役にたちたい」とか、「起業したい」「世の中を動かすようなことをしたい」というような言葉。「バリュー」については、「語学が得意で通訳ができる」 「周囲を明るくさせることができる」「体力があって滅多なことではへこたれない」といった提供できる価値を示すキーワード。 そして「パーソナリティ」では「真面目な」「元気な」「力強い」なんて言葉が出てくるかもしれません。
 次の段階では、コーポレートメッセージ開発を考えるうえでどの視点から言葉を発するべきか、つまり、「ビジョン」を語るのか、 「バリュー」を伝えるのかを考えます。「ビジョン」を伝えるのであれば、製品やサービスによって実現する未来の姿などを訴える ことになりますし、「バリュー」なら品質や機能性に関する言葉が選ばれていきます。そしてこのとき、言葉のトーンは「パーソナリティ」によって大きく影響されることになります。若々しく元気な企業なのか、新しく先進的な企業なのか、おしゃれで洗練された企業なのか。言葉はそれにふさわしいものとして選ばなければなりません。このようにして自社のあるべき姿を一言で表すメッセージを開発していきます。


・言葉を伝え、拡げていく

 このようにして完成した言葉(コーポレートメッセージ)は、それで終わりではありません。それを伝えていかなければ宝の 持ち腐れになってしまいます。まずは、日常的に人と接触する名刺や封筒、レターヘッド、広告、販促ツール、WEBサイトなどに 展開します。従業員は、日々自社が発する言葉を目にすることによって自らを律するようにもなり、それが社内のベクトル合わせや、 意識改革の一端を担うことになります。また、こうしたアイテムと接触する、顧客を始めとしたステークホルダーにも メッセージが徐々に伝わり、浸透していくことでしょう。そして、マス広告やプロモーションによって、コーポレートメッセージ とともに企業の意志を積極的伝えていきます。こういったコミュニケーション活動を中長期にわたって続けていくことが コーポレートブランド構築に結びついていきます。


 多くの信頼できる企業が発する言葉は、吟味に吟味を重ねた結果生まれてきたものと思われます。そこには企業の夢や未来や 価値が託されています。言葉を大切にし、よりうまく伝わるようにコミュニケーションをマネジメントしていくことが、 企業の本質をきちんと理解してもらい、ファンをつくりだすブランディングに繋がっていくのです。


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