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ブランドコンサルティングチームのメンバーが、現場で得た知見や問題意識について論じるレポートを紹介します。

国家ブランディングと企業ブランディング
2010.4.21 ブランド企画部 部長 篠原誠司

 ブランディングの基本的な考え方や手法は、国家も企業も変わらないのではないか。そんな仮説から、国家ブランディングと企業ブランディングの接点を探ってみたいと思います。



・国家ブランディングをマーケティングの視点でとらえ直してみる。

「国家もブランディングする時代になったのか」と驚かれた方も多いかもしれませんが、国家にとってもブランディングはなくてはならない戦略の一つだということは明らかだといっていいでしょう。国を売り込むためのマーケティング戦略が国家ブランディングだ、という視点で見てみると、国家のブランディングと企業のそれには共通点がじつに多いのです。


まず、なぜブランディングに踏み切るのかという、そのときの状況を考えてみましょう。英国は経済の長期低落傾向に歯止めをかけるためであり、韓国はどん底の経済状況から脱出するためでした。日本はアジア諸国の追い上げにより、圧倒的な競争力が揺らぎ始めたからです。ところが、世界規模であらゆるものが動き始めた結果、世界は平準化し、これまでと同じやり方、同じ産業構造では、経済の回復、競争力の回復は見込めなくなってしまった。そこで、産業構造の転換や産業そのものではない別の何かで差別化を図ろうとしている。それが国家の魅力=ブランドづくりということなのではないでしょうか。


一方、企業も、国内外の厳しい競争にさらされ、製品の品質や性能面での差異も少なくなり、何で差別化するのかといった難しい状況下にあって、ブランドという無形の価値を生み出していく道を探っていかなければいけない。まさに、企業と国家は同じ立場にあるといえるのです。



・イメージとアイデンティティ。そのギャップをどう埋めていくか。

もちろん、国家は企業よりもずっと規模が大きく、多様で複雑だという面があるでしょう。しかし、企業も多くの製品や事業、それに関わる多くの人々──従業員や取引先、ユーザー、地域といったさまざまなステークホルダーを抱えているという点では、負けず劣らず複雑です。国家ブランドを企業ブランド、政府や民間の個別の活動を製品ブランドと置き換えて考えてみると、両者の取り組みが非常に似ているということが分かります。


国家のイメージは、国を構成するあらゆるもので形づくられます。それは、自然であったり、企業の活動であったり、人々の行動であったりするわけです。そういうものがない交ぜになって、「あの国はこんな国だ」と認識されるのです。一方、企業はどうでしょう。企業のイメージも、製品や事業それぞれのイメージ、企業の姿勢や伝統、社員の行動といったものによってつくられます。そのように外から認識されるイメージを、自分たちが「こうありたい」と考える内なるイメージ(=アイデンティティ)にどう近づけていくか。それが、おそらく国家にとっても企業にとってもこれからの重要な課題なのです。


この課題を解決するための鍵は、コミュニケーションでしょう。この場合のコミュニケーションは、送り手が受け手のイメージをコントロールしていくタイプのものでなければなりません。しかしだからといって無闇にイメージを押し付けてもうまくいきません。相手を理解した上で、相手にとって価値あるメッセージを発信することができて初めて、よりよいイメージがつくられるのです。



・国家ブランディングでは難しいことも、企業ブランディングならできる。

コミュニケーションには、統合性や整合性、一貫性も必要です。バラバラなメッセージからボトムアップでつくり上げられるイメージは、必ずしも発信したいイメージになるとは限らないからです。だからこそ国家や企業にとって、包括的なブランディングの必然性があるのです。日本の場合は個々の取り組みはさまざまなレベルでも、「知的財産立国」という統合された目標があることによって、大きなイメージのブレは起こらないのかもしれません。


企業の場合は、もう少しシンプルに考えられるでしょう。製品や事業、価値観、ビジョン、従業員といった企業のもつ資産から、「こうありたい」という統合されたイメージを導き出すことの意義として、自社の利益を追求するという明快な目的を共有できるからです。国家という多面的で、複雑、多様な構成体に比べれば、掲げる目標自体が理解されやすいのです。


開発、製造、営業、広報、宣伝といった企業のあらゆる部署で自社のイメージを共有する。そのためにブランディングの専門部署を設けて、立案から構築、実行、管理までを総合的にマネジメントさせることも有効でしょう。そうすれば、顧客に向けたメッセージが一貫したものとなり、受け手に届けたいイメージを届けられる可能性が高まることが期待できます。そのイメージが受け手に肯定的に捉えられれば、企業のアドバンテージはどんどん増していくというわけです。



・企業としてどうありたいのか、その姿勢が問われている。

国家も企業も、ブランディングという戦略なしには生き延びていくことはできません。すでに世界の国々はそれぞれ、何を「売り」にしていくのかを明確にしようとしています。日本であれば、「国民総文化力」という力で世界の中の存在感を増そうとしているわけです。企業も、自らがどうありたいのか、どんな道を進もうとしているのか、そのために何をするのか。そのことを、社内外に問うべきときにきているのではないでしょうか。


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