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ブランディング事例紹介|ブランディング・ブランド戦略 [TOPPAN BRAND CONSULTING]

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三菱重工業株式会社様

企業ブランド強化に向けたコーポレートデザイン開発

グローバル展開を進める中で、ますます高まる企業ブランディングの必要性。
MITSUBISHIからMITSUBISHI HEAVY INDUSTRIESブランドへ。その定着を目指す戦略的デザインとは…。

三菱重工業株式会社 広報部 ブランド戦略グループ 安西智美さん(左) 三菱重工業株式会社 広報部 ブランド戦略グループ グループ長 高野修一さん(中央) 凸版印刷株式会社 マーケティング本部マーケティング企画部 CSR・ブランド戦略チーム 佐藤圭一(右)

新たなコーポレートデザインシステムの導入へ

三菱グループの中核を担う三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)様では、多岐にわたる事業分野の中、非常に多くの製品を取り扱っています。宇宙ロケットから航空機、発電設備、エネルギー関連製品、船舶、産業機器から家庭用エアコンまで、その数700種以上。グループ企業も多く、国内181社、海外138社に上ります。

事業分野が広いがゆえ、ステークホルダーが個々の分野で異なり、事業部ごとに文化や風土の違いもあります。したがって、三菱重工様がグループも含めて全体としてどんな企業なのかわかりにくいという面が生じていました。

そこで、統一された企業イメージを構築するために、2006 年にCIステートメント「この星に、たしかな未来を」を制定。社内に周知徹底させるとともに、社外に向けて企業姿勢や存在価値をアピールしてきました。

「弊社はB to B企業なので、社会に向かって情報発信していくことの重要性が従来は社内に根づいていないところがありました。しかし、近年では、弊社の事業をよく知ってもらい幅広いファンをつくっていくために企業ブランディングは重要であり、社会とのコミュニケーションが欠かせない、という意識が高まっています。今年3月から19年ぶりにテレビCM を復活させたのも、そうしたことが要因でした」(高野さん)。

こうした動きの進展として、今年4月には深青の新しいコーポレートカラーを中心としたコーポレートデザインシステムを導入しました。これは国内外の全グループ企業(MHI グループ)で利用していただくもので、トッパンが提案・制作し、三菱重工様と共同で開発したものです。

色から形、形からデザイン。ブランドイメージの確立へ

三菱重工様はこれまで、スリーダイヤ+社名のロゴを使用する規定のみで、その他の色使いやデザインは自由であったため、展示会や記念品、製品カタログなどの制作物は、各事業部門の担当者がその都度考えていました。そのため、多岐にわたる事業で、さまざまな色の「三菱重工」のイメージがつくられ、CI によって統一した企業イメージを構築しようとしても空回りしていました。

複数の事業部が参加した、ある大きな展示会でのこと。ジャンル分けの関係で、同じ会場でありながらブースが別々になるということがありました。

当然のことながら、担当部署も担当者も制作会社も違ったため、全く異なるデザインコンセプトの「三菱重工」が同居することになってしまいました。「このとき、社名ロゴやCIだけでなく、ひと目で三菱重工だとわかるテンプレートのようなものが必要ではないかと感じました」(高野さん)。

高野さん、安西さん

「実はコーポレートカラーがない」という話が出たとき、赤はあくまでも社章の赤なので、きちんとコーポレートカラーをつくっていこう、ということになりました。そこで、三菱のロゴの色を変えるのではなく、別の形で自由に使えるものをつくっていくことにしました。

「まず色が大事ではないか。その後に形がついてきてデザインする。色とデザインが統一されたツールやグッズを使い続けていくことで、統一した『三菱重工』を訴えられる。そのためには誰にでもわかりやすいものにしたいと思いました。もうひとつには、MHI グループのロゴに対するニーズです。スリーダイヤには使用規定の制約が多く、同じMHIグループであることを表現できるようなシンボルをつくる必要にも迫られていました」(安西さん)。

キーワードの抽出からブランド規定、そしてコーポレートカラーへ

社内ポスター

新しくコーポレートデザインシステムを開発するには企業ブランドを明確に規定していく必要があります。幸いなことに、三菱重工様にはCI を制定したときに社内外からとったアンケートがあり、そこにはイメージを語る多くの言葉が残されていました。たとえば、真面目、一流、エネルギッシュ、たくましい、チャレンジング、地球規模、技術力etc。

トッパンは、こうした網羅的なワードを分析、抽出して、「理念/ブランド提供価値/ブランドパーソナリティ」へと整理、体系化していきました。特に、雰囲気や世界観を示し、デザインへ直接関連してくるブランドパーソナリティについては、「Global」「Passionate」「Steady」の3つのキーワードで規定しました。Globalは、「夢のある、スケール感のある、知的でスマートな」、Passionateは、「力強い、情熱的な、革新的な」、Steadyは、「誠実な、堅実な、安定性のある、伝統的な」という三菱重工様が持つべき「らしさ」や「イメージ」を集約したものです。

そして、これらのブランドパーソナリティをもとに、コーポレートカラーを制定しました。Globalからは、深い青の「MHIブルー」が生まれました。これは夢を持ってグローバルな事業に携わっていくスケール感や成長性、感動を意味しています。また、Passionateからは「MHI レッド」を指定。これは、伝統ある三菱グループの赤色でもあり、ものづくりへの情熱や挑戦をあらわしています。Steadyは、「MHI ブラック」に。世界を代表する企業としての、三菱重工グループの誇りや責任感を示す黒色が掲げられました。

深い重みのあるブルーと地球の円弧をイメージしたデザイン

三菱重工様を表現するコーポレートデザインエレメントは、「グローバルアーチ」と命名された円弧と、MHIブルーラインの2つが基本要素。グローバルアーチは、スケール感のある上昇カーブを描く円弧で、地球のイメージと、多くの可能性を表現し、ものづくりへの強い情熱と未来へ向け積極的に挑戦し続けるさまをデザインしたものです。

また、トーン&マナーシステムとして、カラーパレットや、推奨する書体の指定、グリッドを用いたレイアウト方法、ユニバーサルデザインへの心がけなどをルール化し、マニュアルにまとめていきました。併せてMHI グループのロゴも新たに開発しました。

凸版印刷 佐藤圭一

この仕事にブランドコンサルタント兼プランナーとして携わったトッパンの佐藤は、コーポレートデザインを決定するまでの工程を以下のようにのべています。「分析のうえ、抽出されたブランドパーソナリティのキーワードを、まずビジュアルイメージボードで表現。次にそのビジュアルイメージを言葉であらわすとこうなる、色に落とし込むとこうなるという形で進めていき、最後にデザインのトーン&マナーを構成する各基本要素を規定していくという流れで決めていきました。何でこの色なのか、なぜこのデザインなのかを、論理的にひとつひとつ積み上げていった結果です」。

「弊社の製品には、宇宙も空も海も深海もそうであるように、ブルーのイメージの強いものがたくさんあります。トッパンさんにご提案いただいた深い重みのあるブルーは、弊社らしいということで決め手になったと思います」(安西さん)。

「地球の弧をイメージしたデザインエレメントも、『この星に、たしかな未来を』というCI ステートメントとイメージがつながるので採用しました。浸透を図るうえでもやりやすいと思っています」(高野さん)。

新しいコーポレートデザインとしてさまざまなアイテムへ展開

デザインイメージの統一は、まず名刺から始めて、ホームページ、手提袋、クリアファイル、記念品、看板、会社案内、カタログなどに次々と展開しているところですが、2、3年に1回の展示会もあるので、浸透しきるまでにはまだ何年もかかるだろうということです。

「実際に運用していくと、名刺ひとつとっても、部門それぞれで入れたい要素が違っていたり、すごく長い部門名があったりと、条件の違いがあるので、それを応用問題として解いていく必要があります。そうした対応に日々追われている現状ですが、国内外の各部門、グループ会社からは歓迎の声が大きく、積極的に使っていきたいという明確な意思が見えてきています」(安西さん)。

「弊社はメーカーなのでコスト意識が非常に高いです。そんな中、設計にせよ時間にせよ、モジュラー化してコストダウンを図っています。『CDS マニュアル』によって効率的に色を決められるようになって、これまで一から考えなければならなかったところが軽減された、というのも好評につながっているのではないでしょうか」(高野さん)。

ところで、トッパンの対応はどうだったのでしょう。「いったんデザインを決めたのに新たな要素が出てきて変更を加えなければならない、ということが次々に起こり、その都度相談に乗っていただきました。本当にありがとうございました」(安西さん)。

高野さん

「こういう数値にしにくい話というのは、社内で説明するときに困ってしまうのですが、表現の仕方などわかりやすく教えていただいたので、助かりました。これを制定して終わりではないと思っています。このコーポレートデザインシステムを維持していくにあたって、メンテナンスというか、今後これを継続していくにあたり変更を加えるタイミングなど出てくるかと思うので、引き続きおつき合いいただければと思います」(高野さん)。

コーポレートデザインシステムとしてさまざまなアイテムへ展開
O.VI(ビジュアルアイデンティティ) 三菱重工 この星に、たしかな未来を1.カラー規定2.推奨書体3.ビジュアルイメージ規定4.レイアウト規定5.デザインエレメント深青のコーポレートカラーを中心としたデザインシステム。「三菱重工」という企業ブランドを明確に表わすためにトッパンと三菱重工業で共同開発した。このデザインシステムを用いてさまざまなアイテムに展開されている。MHI GROUP ロゴ名刺・会社案内等の印刷物手提袋・クリアファイル等のグッズ
  • 本プロジェクト担当
  • brand consulting, strategic planning, & produce
  • creative direction
  • 佐藤 圭一


※本記事は、ideanote vol.66(2012年11月1日発行)に掲載した内容を再編集したものです。

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